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富士山で観測をしたくなるのはなぜなのか?




加藤俊吾 (首都大学東京准教授)

NPO富士山測候所を活用する会の発足から10年を経過しました。いつもあわただしくそのときに出来ることをこなしているのですが、手元のパソコンにある写真や資料をひさびさに見返してみると、すっかり忘れていたことがたくさんありました。私が富士山観測にか関わりをもちはじめたのは2005年ごろからのようです。かなりの頻度で開かれていた富士山高所科学研究会に参加したり、2005年のゴールデンウィークにはこれから富士山観測にかかわるということで個人的な山行で関係者2名と山頂に訪れていました。

2006年に土器屋先生が代表で研究費を獲得し、海外の山岳観測の著名な研究者を招いて富士山シンポジウムなどを数回開催していました。そのときの写真を確認すると、現在も大きくかかわっている方が当時からたくさん出席していました(みなさん若くてびっくり!)。 現在でも夏に行っているオゾンと一酸化炭素の測定は2008年からはじめております。現在多くのグループによりなされている活動の様子はNPOのホームページやこの会報で紹介されているとおりで、活発に行われております。

NPO立ち上げのときだけでなく現在でも運営にかかわる方々、研究者・教育者の皆様が大変な労力をかけてこのNPOの活動を継続しているのですが、この活動がいかに大変なものなのか再認識をしております。けれども、なぜ多くのひとが苦労をいとわずこの活動に関わり続けているのでしょうか?

それぞれの理由はあると思いますが、私個人について考えてみました。 ずばり、山が好きだから、でしょうか。 大学でワンダーフォーゲル部に所属しており、仕事で山に登ったりする機会もあるかもしれない、ということでフィールド観測ができる大気化学研究の分野に進みました。博士の学位も長野県の八方尾根での観測研究により取得しておりました。そのような人にとっては富士山頂で観測ができるというのはなんとも心が弾む話です。

観測を行うためには、安全面に最新の注意をはらう必要があるし、多くの関係者との調整・協力が必要ですので、個人で山に登るように気楽には行えません。それでも日本最高地点の富士山の魅力というのはありあまるものがあります。 苦しくても登りつづけるのは山頂での美しい眺めが待っているから、というような言葉を聞くことがありますが、私は違います。山に登って山頂に立ってよい眺めがあっても落ち着かず、無事下山するまで安心できません。下山して登ってきた山を見上げたときに、「あっ、あそこに行ってきたんだ」とはじめて安心して振りかえることができます。観測・研究も行っているときは慌しくて満足できるようなことはまったくないのですが、後でその価値が分かりやってよかったと思えるようになるものだと考えています。

私の住んでいる八王子からは富士山が見えます。夏の観測期間には「あそのてっぺんのあの場所で装置が動いているんだ」と思うと、とても不思議でうれしくなります。また無事に「あの場所」で観測が行えますように。



写真 下見のため訪れたGWの富士山頂(2005年5月4日)


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